2009年4月24日金曜日

Ecological Perspective

前回の投稿から半年も過ぎていたことに気づきませんでした。たしかに、公私において一番忙しい半年でした。約2年間の大学院でのTESOLと言語学の研究がようやく先週ようやく終了いたしました。この2年間、最新の言語習得の様々な理論と言語学習の方法論を学びました。理論的な部分が多いものの、既に17年の指導経験のあった私にとっては集大成となる啓発的な経験となりました。今後の自分の指導、言語への見方が変わるすばらしい経験ができたと思います。世界的に権威のある言語学者や実践的な立場にいる言語指導者の方々のコースや講義を聞けたことは至福の時間でした。学術的な刺激を受けれたことで、自分の中で何かが新たに生まれつつあることを感じています。このような現象も言語の習得同様環境によるemergenceと言えるでしょう。これが学習であり、取得の一プロセスなのです。この2年間の大学院での経験は明らかに私に新たな学習のaffordanceを与えてくれたと思います。

近年第二言語習得(SLA)の見方にこのような環境による影響から人は学習し、言葉を身につけると考える見方が現れています。これはecological perspectiveと呼ばれ、van Lier やKramschなどの社会言語学者の提唱する言語取得・調査への新たな観点です。ベースとなっているのはLarsen-Freemanが支持するcomplextiy theory(複雑性理論)です。

ChomskyやKrashenなどの生得または外的な要因だけに視点をおいた学習や習得の理解には限界があります。それらの視点からだけでは内在化の説明はできないのです。我々が言葉をマスターできるのは、文法が分かることでも、たくさん読んだり、聞いたりするからでもなく、それらもひとつのaffordanceとしてnoticing「気づき」のためのひとつの関係作りに利用することでしかないのです。ecological pespective は今までのinputやoutputを超越した形のaffordanceを言語のもうひとつの重要な要因であるnocitingやattentionと呼ばれる認知と結びつけているのです。affordanceは学習者と環境の良好な関係によって生み出されます。つまり言語の学習環境においてはaffordance自体が存在するか、またはaffordanceが豊かが成功の鍵となりえます。

文脈性のない機械的で人工的なinputを提供するのではなく、その学習者の環境にとって意味あるaffordanceを満ち溢れるようにすることこそ我々言語教育者の今後のテーマとなると思います。