2008年10月18日土曜日

Evolution of Language

1859年のダーウィンの種の起源説により人類の進化が解明されたが、依然人間の言語の進化は謎に包まれている。先日NHKの番組(2008年10月12日9:00~9:50)を見た。それは、読字障害についてだったが、病気の謎から人類の進化を謎説くものだった。

ご存知の方も多いだろうが、脳は左半球、右半球に別れ、左脳が言語をコントロールしている。特にWernicke's area(ウェルニック野)とBroca's area(ブローカ野)が言語のプロセスに深く関係している。上ウェルニック野は聴覚と信号を感知し、ブローカ野に伝えられ意味に解析される。文字の場合は視覚野を通った後39/40野を通りここで、文字が音へと変換される。読字障害の人はこの39/40野での文字から音への変換が困難となるらしい。

しかし、人類が文字を発明したのは、人類の長い歴史の中ではつい最近のことである。言葉は1,600,000年前に話され始めたと言われていますが、文字はメソポタミア文明の時代(今から5,000年前ぐらい)になる。そして、活版印刷(600年前)が発明され、産業革命(200年前)以降我々は膨大な文字を毎日見ている。そして10年ほど前、インターネットの普及により更に我々は毎日文字を見ることが多くなっている。言葉は長い年月をゆっくりと時間をかけながら進化した一方で文字の浸透は急速だった。人間が文字の進化についてきていけていないのかも知れない。

我々の脳は進化の過程で言語に適した領域(ウェルニック、ブローカ)を獲たものの、文字の処理のための領域は特に獲ていない。39・40野は文字の認識の領域ではなく、本来は視覚、聴覚、体性感覚などの領域であり、そこを使っているだけなのだ。

この領域はスポーツや音楽などと同じように個人差がある部分だ。この領域が発達していないからといって劣っているわけではない。読字障害者の場合、この部分が弱い分、右脳で図形や通常の人が持っていない能力を発揮することが分かっている。39・40野も実は人間が道具を使うようになり発達した部分なのだ。この部分を強めるには、視覚や身体を使う練習が効果的であるようだ。

外国語学習で、特に早期の学習でTPR(Total Physical Response)が言語の学習にとって効果的なのは39・40野を活性するからかもしれない。また児童は絵本やカードの使用が良いのもこのことと関連性があるかもしれない。日本人が欧米人に比べて読字障害者が少ないのは、漢字が視覚的な情報となり39・40野を活性させているからなのではないだろうか。

文字を導入する前に、視覚や体性感覚を強めておくことも言語の習得にとって必要な条件なのかも知れない。